読書メモ – 中国私論

橘玲さん著作、読書メモ2回目です。中国の人の考え方とか全然知らなかったので、初めて知る事が多くて面白かったです。特に良かったのは、他の文化を知ることで自分の国の文化の事が分かる点。同じ農耕民族なのに日本とどう違うのか等、ヒントになる事が多かったです。

アジアの人口ランキング

中国の人口は13億ですが、アジアの他の国の人口と中国の各省の人口を棒グラフで並べています。このグラフを見ると各省がアジアの国に相当する人口を有している事が分かります。このグラフでは1位インドネシア2億3千、2位日本1億2千、3位広東省1億、4位フィリピン1億、5位山東省9千、6位河南省9千です。 中国の特徴として人が多すぎる、というのがありそれがよくも悪くもかなり大きなインパクトを持っています。

日本の勤勉革命

江戸時代の最初の100年で人口が1000万から3000万に増加したそうです。その食料を補うために徳川幕府では工業化によって食料生産を効率化するのではなく、増えた人口によって労働集約的に解決するというアプローチをとったそうです。具体的には農地を家ごとに細かく区分けして所有権を絶対化しその中で家畜を使わずに皆が勤勉に働くことで食料増産をしています。効率性より勤勉性を重視するのはこういうところにルーツがあるのかもしれません。

グワンシの社会

社会的な関係性として日本ではイエが重視されますが、中国では血縁のほかにグワンシと言って自分に関係がある人かない人か明確に区別する考え方があるそうです。日本のイエが”場”に生じる社縁であるのと対照的にグワンシは土地とは関係のない人的ネットワークだそうです。この違いは当時の人口の流動性から来ていて日本が土地所有権や藩の存在などから人が土地に密接で固定的だったのに対し中国では特に清時代の人口爆発期に土地が広大な事から食料確保のために人口の移動が起き宗族のようなネットワークが有効だったという経緯があります。

中国の国内に限らず中国・韓国の人たちはアメリカでも人的ネットワークをうまく活用しているイメージがあるんですが、これは一緒のものなんでしょうね。

裏切られる事が前提の社会

中国人は友好的で日本人のようなムラ社会的な性格はなく集団であってもオープンだそうです。ただ、一方でグワンシの有無は区別していて、グワンシのない相手に対して裏切ることで自分が得する場合、裏切ってもそれは悪と見做されないとあります。日本でも戦国時代に下克上が正当化されていたと例にとって説明していますが、中国では日本よりも争いが絶えなかった分文化的な前提として裏切りが多かった=自己防衛できてないほうが悪いという価値観が育ったということなんでしょうか。

中国人にとってグワンシは日本人がイエと考える会社よりも重要なもので、グワンシさえ盤石であれば会社を解雇されてもグワンシから働き口を得る事ができます。日本人はイエである会社への帰属が命なので、会社への考え方が前提から違う事が分かります。

土地所有権がない中国

社会主義国である中国では土地は公有制であるため中国人は土地の使用権しか持っていないそうです。この事から都市計画を行う際の立ち退き補償などがかなり安価に済むとか。書かれているのは1平米あたり10元。ここ30年で都市部に4億の人が移動しているとあり都市開発の需要は高くこれを宅地開発して1平米あたり1万元で売却しているとも言われています。中国の不動産バブルは鬼城など得体の知れない感じもありますが、背景にはこういう事があるんですね。こぞって開発するのも頷けます。

公務員の腐敗はなぜ起きるか

毛沢東的な国家観から中国は実は腐敗に厳しい社会だそうです。意外。収賄などで罪も重く死刑になる事も多いようなんですが、この腐敗に厳しい社会で腐敗が常態化してる理由は端的に公務員の給料が生活できないまでに少ないからだとか。本来は政府が多すぎる公務員のリストラを行うなど給与引き上げのための改革を行うべきなんですが、地方も人民軍もコントロールできていないためそのままになってしまっているというのが現状のようです。

中国人の民族的アイデンティティと反日

中国は人が多すぎるし土地も広大で国という形に留める事自体実は至難の技という事かもしれません。孫文は「中国人にあるのは家族主義と宗族主義だけで、民族主義では団結できない一片の砂である」と言ったそうです。ただ、これは中国が日本の侵略を受ける事で変わってきます。第一次大戦と第二次大戦を通して度重なる日本からの侵略が抗日デモと共に中国人の民族意識の高揚につながったようで、毛沢東も実際に「日本が侵略した事で中国は変わる事ができた」といった内容の談話を残しているようです。反日と聞くと中国共産党のイデオロギーや反日教育などが思い浮かぶのですが、実はとても奥深く中国民族としてのアイデンティティに深く結びついているという事が分かります。中国民族を考える上で反日は必然であるという事が理解できました。